第32話 猫の呪い『ネズミの攻撃』


 数カ所に置いた毒入りの猫餌のおかげで野良猫の被害は減ったようだが代わりに野ネズミ被害がではじめた。

天井裏を走り回る音が聞こえた。食べ残しが食われることがあった。

 ネズミの捕獲シートを試みた。小さい野ネズミはシートの粘着力に負けて張り付いてチーチーと叫んで仲間に助けを呼んでいた。

 ネズミ駆除会社に依頼したが数日間は何事もなく安心できた生活ができたが、数日後にはネズミの数は次第に増えだし、夜中にトイレに行くときに廊下を走る姿を見るようになった。

 そして恐ろしい出来事が起きた。

夜中だった、夢なのか現実なのか。

ネズミが俺の指を食べている。痛みがないので夢かもしれない。

 ところが朝になり、食われた指がないのに気づいた。

血は出ていない、痛みはない。人差し指の第二関節から先がなくなっている。

 出血していれば病院で止血しに行かないとならないが、傷口はソーセージにように閉じられている。

もし特別な病だったら心配になり外科の病院を訪ねた。指先のない指を診察した医師は「昔に指先を切断したことがありますか。そのことを忘れているのでしょう。」と疑って何の処置もしないで帰された。

 

 その夜も同じ出来事があった。

両手の指がネズミに食われていた。

 指先がないと不便だ。一本の指だけなら生活に問題はないが、全部の指先がないと物を掴めない、仕方なく両手を使って物を移動させるしかない。

ネズミが食べたのなら食べ残した骨とか皮膚があるはずだが、それは見つからない。

 次は足の指がやられた。

第二関節から先が全てなくなった。

歩けない。体重を前にかけると倒れてしまう。かかとだけで歩いて動くしか方法はなくなった。

恐る恐る鏡を覗いた。そこには想像もつかない顔が写っていた。鼻も耳も食われている姿だ。

今度は腕と脛が食われた。

胴体に左右に残った腕と膝から先がない足だけ残っている。

 惨めな己の姿になったが痛みと出血がないのが幸いだが、自分一人では何もできないし、この先のネズミの被害が恐ろしくなった。耐えられなくなった。

 悪夢は続いていた。

 

 寝行った時だった、けたたましく火災警報器が鳴りだした。

 目を覚ますと天井が燃えていた。じきに呼吸ができなくなった。

 

 ネズミたちはついに天井裏の電気配線を食い始めたのです。

電線の被覆が食いちぎられてショート、積もっていた埃に引火し、天井裏が燃え出した。火災報知器は室内に着いているので、煙が室内に出るまでは警報機が鳴らないので、住民は気づくのが遅れて死亡した模様だ。

 出火原因は漏電と発表され、住民の夫婦が死体で発見されたが、着衣は焦げている程度で体の表面に火傷がなく、あれだけ短時間の火災では一酸化炭素中毒による死亡ではないかとしたが、自殺や他殺の関連も捜査する方針だ。

 それは焼け跡の調査に慣れている警察も手足の指先と鼻と耳がない不思議な焼死体に驚いたようだ。手と足の指先は何者かが食いちぎった跡があり、鼻と耳にも同様な傷が発見された。

 遺体解剖の結果、ネズミなどの歯型が検出され、おそらくかなりの数が同時に手足などの身体の先をかじって食いちぎった様子だった。と報告されたが、焼け跡にはネズミの痕跡はなく出火で逃げたと考えられた。

 つづく