頭の中でしていたナビの声はぷつりと途絶えた。
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できたての道路は走りやすく、自転車も走れる広い歩道もある。
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「今帰ったよ。買って来たからね。」
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「遅かったじゃない。」
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「新しい道を走ったんだ。広くて立派な道だったよ。」
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自転車で行ったことと、不思議なナビの声は内緒にした。
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「ナビを交換しないとダメかなあ。地図が古くなったよ。」
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「やめて、地図でなくて車を買え替えたいんでしょう。」
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バレていたか。
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「道のできるたびにナビを新しくしてたらきりがないわよ。
あのままでも使えるから。」
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「新しい道は車の表示が田んぼの中を走るだけだなあ。
スマホを使えばいいか。」
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「今にすごい機能のナビが出たら買い替えましょうよ。」
新しい機能は音声応答システムが組み込まれた。
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ナビを起動すると。
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『今日はどちらまでご案内しますか。』
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「近く和菓子屋に案内してくれ。」
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『近くに3件の和菓子屋があります。どちらにしますか。』
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お店の名前を言うと、直ぐにガイド画面に切り替わった。
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快適な道を走っていると。
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『そんなに飛ばすと危ないですよ。』
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「わかった、悪かったね。」
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『どうたしまして。』
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実に便利だが長距離になるとうるさいし、知ってる所になると
ナビを切りたい。
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「ナビさん、ご苦労様でした。」
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この一声で動作は止まらない。
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『案内を止めますが。道を間違っても知りませんよ。』
音声応答ナビにオプションガイドが用意された。
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パスワードで好みの案内ができる。
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試しに色気のある女性にセットした。ナビ子ちゃんだった。
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すると。
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『待ってたわ。今日は一人。どこに連れってくれるかしら。』
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スピードが上がると。
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『バカね。そんなに飛ばして何する気。』
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駐車すると。
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『ここで待ってるわ。浮気しないでね。』
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運転中はずーとナビ子ちゃんと楽しく話し続けてしまいそうだ。
屈強な男を選んでみた。ナビ蔵だ。居眠り運転をしたら画面から
飛び出て絶対殴られる。
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どんな応答なのか近所をドライブしにエンジンをかけると。
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『オス。どこに行くんだ。間違ったら承知しねえぞ。』
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ドスの効いた声だ。
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『この先にサツがいるから飛ばすんじゃあねえぞ。』
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「はい、気をつけます。」と震える声で答えてしまった。
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近くのコンビニに立ち寄り、エンジンを切ると、途端に。
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『オウ、てめえどこに行くんだ。』
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