その日から刑事は考え続けました。
見えていないものがなぜ分かったのか。
通報者の話が細かい部分で一致しすぎている。
着衣について確認していた。
正式な検死結果が出て死亡推定時期は凡そ1ヶ月前だった。
推測は続きました。
もし通報者が犯人だとして、一人でハンキング中に偶然出会った女性ハイカーを案内すると言って、以前訪れた人目が付かない場所に連れて行き、着衣を脱がして犯し、それでも心配になっていつも持ち歩いている登山ナイフで頭部を切断して遺棄したのだろうか。着衣は燃えるゴミとして処理したに違いない。
その後に心配になり今度は奥さんを連れて現場に出かけ確認して、犯行を隠すために偶然に発見したかのように振る舞ったのではないか。とも考えられる。
だが、誰にも見つからない場所ならなぜ証拠を隠したのだろうか。
地元の人も行かない場所だ。
通報者でないとすると言葉巧みに女性ハイカーを寂しいあの場所まで連れていったのだから現地に詳しい人だろうか。
ハイカーは言われるままに付いていったのだろうか。犯人と顔見知りではないだろうか。だから頭部を切断したのか。
顔がバレると都合が悪いのはなぜだ。犯人との関係を知られては困る同僚ではないか。
頭部が見つかれば誰だかがわかるし、捜査は進展するのだが、捜査人数を増やして捜索範囲を広げたが頭部と凶器が未だ発見されない。
「課長、このまま捜査しても見つかりません。近くにある貯水池を
探ってはいかがですか。」
「現場からはかなり降りた所だが近いな、俺はあの貯水池は嫌
いなんだ、幽霊話があったりパワースッポットだとか。」
「課長にも弱点があったのですね。でもなんとか頭部を見つけ
たいですね。」
貯水池は農業用として作られ釣り人の多い所ですが、水深は深くて周囲から泥の流れ込みで底に泥が堆積していて潜水捜査はできないため底引き網で浚うことになりました。
程なく白骨化した頭部が出てきました。
すぐに複顔が施され生前の顔が現れました。
しかし、発見された胴体と頭部は同一人物でないこと、D N A
鑑定でもわかりました。
すると、もう一体の胴体と、頭部が何処かにあるはずです。
通報者が犯人なのか、謎は深まります。
「通報者の周辺を当たってくれ、今の時点では容疑者扱いはできないので十分注意してください。それと勤め先で事件の参考人と知れるだけで彼の将来に傷となるのでそ十分考慮して頼よ。」
通報者の勤め先から情報収集が開始されました。
「彼は普通のサラリーマンで、山登りが好きで奥さんと毎週出
かけているようです。女性関係の噂はありません。」
「気になる話ですが事件とは無関係だと思いますが、女性社員
が結婚を理由にひと月前に退社したとのことです。」
「その女性の名前と出身地は調べたか。」
「調べてあります。東北のある場所です。彼女とは連絡が取れ
ませんでした。」
「これは俺の感だが何か気にかかる話だな。もう少しその辺を
調べてくれないか。」
「奥さんから何か聞いたか。」
「ひと月前の行動ですが、奥さんの話ですと珍しく一人で山へ
出かけたそうです。」
まさかその日の前後に山で女性ハイカーを殺害したのか。
地元の県警と連携して彼女の捜索が行われました。
「その結果ですが彼女は家に帰っていません。現在行方不明で
す。それと婚約者の彼には別の女ができてそれと結婚したそ
うです。」
「その彼の動きが気になるなあ。こんな推測だが彼が結婚を約
束したが彼女ができてしまい。これまでの女性と別れ話をし
たがもつれてしまい殺害したのかな。」
「でも変ですね殺すのなら地元に帰ってからでないですか。」
「何かヒントになることはないかなあ。」
「ありました。事件現場と同じような場所が彼の家の近くにあ
ります。小高い山と池の配置がそっくりです。」
「殺害場所が家の近くに似た場所か。君ならどう考えるか発表
してくれないか。」
「あの殺害現場は実家の景色に似ているので、彼女と何回か
行ったのではないですか。そこで結婚の約束をしたと思いま
す。」
「ところが実家へ戻ると別の彼女ができ今の彼女と別れなけれ
ばならなくなった。そこで現場に誘い出して殺害したと思い
ます。」
「身元がバレないように衣服を剥いだのか。それとも思い出を
持ち帰りたかったのか。それと頭部ですがあの場所に放置す
るのは可哀想になり地元に運んだ可能性が考えられます。」
「頭部だけ持ち帰ったのか。遺体を運ぶより目立たないな。」
地元県警と合同で頭部の捜索が行われました。
それはすぐに着衣に包まった頭部と凶器が発見できました。
遺体を放置した場所と同じ森の中に埋めてありました。
これで一つの事件は解決しましたが、もう一つの頭部についてはかなり昔に貯水池の木に首吊り遺体があって、胴体だけが発見されたが頭部は発見できなかったと捜査記録に残っていました。
さて不思議なことは未解決です。
犯人は逮捕できたのですが、第一発見者の事が気がかりです。
ちょうどひと月前に一人で山に出かけたのかだが、事件には関係ないようだった。
しかしなんで細かく遺体の様子を話ししたのか不明でした。
だが、今回の捜査で彼のことを知ることができたのです。
彼は遺体発見のプロかもしれません。
調べによると山で行方不明者の遺体を発見して以来、首吊りの自殺死体など数件があり、その都度警察で事情聴取されています。
始めは動揺のためか、あやふやな答えしか出なかったが、何件にもなると詳細に現場を観測して報告してくれてたようです。
「課長わかりましたか。私たちよりも現場経験が豊富ですね。
彼から遺体発見時に付いて講習会で聴きたいですね。」
「それも参考になりそうだね。ところであの時の話に遺体発見
時に体が震えたとあったけどあれが何かわかるかね。」
「あれですか、彼の特殊能力で遺体が発生するお招きを受信し
たのではないですか。」
「課長も訓練すれば霊感がつきますよ。」
「やめてくれ。俺は霊感は信じないし大嫌いだ。」